チューリップ通信

ベランダの牡丹の受皿に、小豆色の黄金虫が、豆粒みたいにまるまっていました。
お皿をひっくり返して、コンクリートにぽい。
牡丹にお水をあげました。

すると...
コンクリートの上に洩れた小さな水の流れに、黄金虫が駆け寄って。
小さな波紋が出来るくらいにごくごく飲みはじめたのです。
真夏の外周りを終えたサラリーマンだって、あんなに真剣にビール飲まんわってくらいの、全身全霊を込めた飲みっぷり。
余程、干からびていたのね。
一寸の虫にも五分の魂ってこのことか、と、思わず黄金虫を眺めてしまいました。

ところが、黄金虫がぴたりと動きを止めます。
全然動かない。
やっと水にありついて、
「嗚呼、僕が欲しかったのはこれだ。やっと潤うことが出来たよ」
と気を失い、安心のあまり息を引き取ったに違いない。
しんみりです。
コンクリートが乾いたら、箒で掃いて捨てよう...。

しばらく家内の用事をして戻ると、あの黄金虫の姿がない。
絶命したのではなく、がぶ飲みして満足の一休みをしていただけか！！

人間くさい虫だこと。
ささやかな命の触れ合いでした。

牡丹の鉢には殺虫剤まきました。

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